2024年3月、株式会社よみうりランドが手掛けるフラワーパーク「HANA・BIYORI」内に、花々はもちろん、天然温泉と都心方面へ広がる眺望、極上の食が楽しめる新温泉施設「よみうりランド眺望温泉 花景の湯」がオープンした。
「遊びを、まん中に。」をスローガンに掲げる株式会社よみうりランドならではの極上の癒やしをお届けする温泉施設は、いかに生まれ、どのような施設になることを目指しているのか。花景の湯の企画・開発、運営をリードする3名の社員が語らう。
担当者紹介
I部長/プロジェクト推進室(当時)
花景の湯のプロジェクト全般をマネジメントしながら、フードやリラクゼーションの業者選定を主導。遊園地、競馬場、ゴルフ場、温浴施設と株式会社よみうりランドが提供するあらゆる「遊び」を担当した経歴を持つ。サウナー。
I課長補佐/健康パーク事業部 運営課
花景の湯のプロジェクトのメイン担当として、施設の計画から完成、許認可の取得や運営などを担う。前任部署では花景の湯の温泉の掘削にも携わっていた。温浴事業に携わる中で自身もサウナーに。
Oさん/アセット戦略部ファシリティ技術課
建築やデザインを主に担当。建築に対する専門性を持つチームの一員として、施工・設計会社と向き合いながら工事管理や素材の調整、より良い設計・デザインの方向性を探った。外構や館内着のデザインも担当。
絶景広がる丘の上、 悲願の温泉施設実現に向けた挑戦。
I部長:花景の湯のオープンまで忙しかったから、こうやってゆっくり話すのは久しぶりだね。
I課長補佐:みんなバタバタでしたからね。たまたま会ったタイミングで擦り合わせをしたりして、当日までオープンできるのだろうかと緊張感がありました(笑)
Oさん:本当に全部ギリギリまで試行錯誤を繰り返して進めましたよね。
I部長:新型コロナウイルスやウクライナ問題の影響で、資材不足や価格高騰もあって思うように進まないことも多かったからね。個人的にはもっともっとこだわりたかったことが100個以上はあるけど。
I課長補佐:それでも、壁紙もタイルも思い通りにならないところはOさんをはじめファシリティ技術課の知見でリカバリーしてもらったり、全員でアイデアを出し合ったりした結果、納得できるものができたと思います。
I部長:こうして無事にオープンを迎えたけど、2人は初めて花景の湯の計画を聞いた時にどう思った?よみうりランドの敷地で一番の眺望のいい場所に、アッパーミドルをターゲットにした高級志向の温浴施設をつくるというのが出発点だったよね。
I課長補佐:温浴事業に携わるようになって、お風呂とサウナ、特にサウナがめちゃくちゃ好きになっていたこともあって、すごく良いなと思いました。崖地にほど近い場所だったので、ここに建ったらすごい眺望だろうなと。
Oさん:私は元々お風呂と岩盤浴が好きだったので、このプロジェクトに入れるよと言われて純粋に嬉しかったですね。詳細な資料を見ると、思っていた以上に高級路線で、当社が運営している温浴施設「よみうりランド丘の湯※」や「稲城天然温泉 季乃彩」とも違っていたので楽しみだなと思いました。
I部長:高級路線はずっと変わらないんだけど、プロジェクトを具現化していく段階で大きく変わったのは、HANA・BIYORIとの一体化を更に推進しよう!という方針だったね。そこで、高級志向のスーパー銭湯という単独の温浴施設のイメージからヒーリングパークという方向にシフトチェンジした。HANA・BIYORIができる前からよみうりランドの敷地に温泉をつくるのは、会社の悲願。温泉施設ができて初めてHANA・BIYORIは完成するんだという使命感をもって臨んだよ。
※2024年1月8日をもって閉館
HANA・BIYORIと一体で描く、
唯一無二の温泉施設。
I部長:HANA・BIYORIとの一体化ということでいうと、花景の湯の館内には、一切緑がないというのは大きな特長かもしれないね。普通の温浴施設は露天風呂に植栽があったりするけど、うちはあえて植栽をしていない。それは、360度花や緑に囲まれた景観を楽しんでもらいたいという想いがあるから。HANA・BIYORI側は、1階も2階も全面ガラス張りにしたことで特に調和がとれているよね。Oさんは何か思い入れのある場所はある?
Oさん:個人的に思い入れがあるのは、一面の景観が楽しめる岩盤浴「火窯の間」の天井です。
I課長補佐:あー、確かに!絶対今の方がいい。
Oさん:当初、設計会社の方に提案いただいた天井の色は赤だったんですが、パッと見た時に景色よりも赤い天井が目立っているように感じました。社内外でも様々な意見がありましたが、外の景色がまず目に飛び込むように、天井は落ち着いた色の方がいいと周囲を説得しました。今振り返っても、これは戦ったなと思っています。
I課長補佐:そうそう。社内でも、設計会社さんが狙いをもって赤を選んでいるならそれで良いという人がいたり、そうじゃないという人がいたり。薄い色が良いという人もいれば、いっそ黒が良いという人がいたりして議論が白熱したね。
I部長:私を含めたおじさん世代は、赤でもいいんじゃないという意見が強かったけど、女性陣に猛反対されて、シュンとしたのを覚えているよ。最終的に、岩盤浴は女性の利用率が高いので、私達は折れた感じだったね。
Oさん:もうひとつHANA・BIYORIとの一体化というと、館内着ですね。本来は私の担当ではなかったのですが、 このプロジェクトで勤務する同期から相談を受けて同期5人全員で考えることになりました。コンセプトは、HANA・BIYORIに館内着のまま行けるクオリティのものにすることと、写真を撮ったときに華やかになるということ。とにかくHANA・BIYORIらしさを入れたいということで四季の花をイメージした4種類を最初に作りました。とはいえ、華やかすぎたり、お花が出すぎたりしない方がいいという方もいるので、さらに4種類つくりました。
I部長:HANA・BIYORIとの一体感を強くすると考えなければ、多分館内着はここまで増えなかったよね。
Oさん:そうですね。HANA・BIYORIにお越しのお客様の服装との違和感が出すぎないように、デザインを工夫したり、普段着寄りのズボンでバランスをとったりもしているんです。
I課長補佐:アッパーミドルがターゲットということで、食事の面でも銀座おのでらで知られるONODERA GROUPの株式会社LEOCさんに入っていただいて、一級品にこだわりましたよね。
I部長:そうだね。花景の湯のレストラン「美食ノ極」の協力会社を選定する上でキーワードになったのは「唯一無二」。メニューはもちろん、ONODERA GROUPとしても温浴事業に携わったことがないから、そういう意味でも唯一無二になれる。試食会をやってもらった時は、温泉施設のレストランではなく、レストランのための温泉施設であってもいいんじゃないかと思ったくらいその味に感動したよ。
I課長補佐:実際のお客様にも「美食ノ極」は好評で「生まれて初めてこんなにおいしいマグロを食べた」と喜んでいらっしゃる方もいて、本当に良かったなと嬉しくなりました。
I部長:失敗を恐れるのであれば、すでに温浴事業で実績のある協力会社にお願いするのが普通だし、それでも十分に満足するものは提供できたと思う。だけど、株式会社よみうりランドらしさでもある、「新しいことに挑戦する姿勢」でLEOCさんとタッグを組むことに決めたんだ。
「遊びを、まん中に。」を体現した、
“サウナー”目線のサウナ。
I部長:花景の湯の中で株式会社よみうりランドのスローガン「遊びを、まん中に。」を体現したポイントを挙げるなら、I課長補佐にとってはサウナかな?
I課長補佐:完全にサウナですね。今、心身ともに整えることが自分自身にとっての「遊びを、まん中に。」です。そんな中で、サウナユーザーとしての視点をサウナづくりには取り入れました。男湯の方にはシングル(※水温が1桁)の水風呂や高温のロウリュサウナなどサウナ好きの中でも、ハードなセッティングが好きな尖った方々にも刺さる設定にしています。女湯も女性に人気な高湿度のサウナや細かなセッティングにこだわりました。
I部長:お客様のニーズに応えられないと、レジャーとしては成り立たないからね。自分自身も「遊びを、まん中に。」しておかないと、お客様が望んでいるものが何かわからないということ。Iさんのように、自分がお客さんとして実際に遊んで、楽しんでみることは本当に重要だと思う。遊びができない人に、遊びを提供することは絶対できないからね。そういう私も、温浴施設を担当するようになって、自前でテントサウナを買ったり(笑)
I課長補佐:部長のテントサウナは究極ですよね(笑)もう少しだけ、サウナのことを語らせてもらうと、サウナの設定温度と体感温度は違っていて、体感温度は湿度に左右されるんです。うちの男湯のサウナの設定温度は91℃ですが、入ってみるとかなりハード。120℃のカラカラのサウナよりも、非常に熱いんです。女湯のサウナも設定温度は70-75℃ですが、熱すぎて入れないという声を頂くこともあります。温度だけ表記してしまうと、大したサウナじゃないと思われてしまうけど、ロウリュ含めた湿度などの設計でコアな層も含めたあらゆるお客様に支持されるサウナに仕上げています。ここは何度も細かく議論を重ねました。I部長や私といった、サウナ好きの発信がなければ、ここまでのサウナは出来ていなかったかもしれませんね。
I部長:建物の大枠は決まっているので、中身をどう工夫すればより良くできるかをみんなで事細かく決めていったね。サウナブームということもあり、サウナのセッティングは一番徹底してこだわることが出来たんじゃないかな。そのほかにも、リクライニングチェアとか、家具とか。
I課長補佐:女性の意見もOさんに聞きながら「デザインどっちがいいかな」とか、広く意見を交換したね。
Oさん:リクライニングチェアの形とか、みんなで座って試して決めたりもしましたね。「包む型」か「フラットタイプ」か。結局それぞれよくて、両方入れたんですよね。
I部長:そうそう。男女の違いも年齢の違いもあって、この3人の間でも体格の違いもあるので、どれがリラックスできるのかっていうのは千差万別。自分はこれが好きだけど、この人はこれが好きっていうのが絶対あるし、その時の気分などによるところもあるので、なるべく多くの選択肢をお客様にご提供できるようにしたいんだよね。オープンしてからも、新たにハンモックを入れたり、少しずつ変わっているよね。
I課長補佐:どんどん進化しているという言い方がいいのか、お客様のニーズを直に伺って、タイムリーにこれだけ変わっていっている施設もなかなかないと思いますね。
「箱根に負けるな」を合言葉に、
泊まりのない旅行体験を。
I部長:I課長補佐とも話してたけど、温浴施設だけを成功させるつもりでいるのであれば、それだけをつくれば済む話だった。それを花景の湯は、あえてHANA・BIYORIの中に持ってきた。これも、株式会社よみうりランドらしさが滲んだチャレンジだなぁと思う。
I課長補佐:遊園地やテーマパークの“横”に温浴施設があるというのはいっぱいありますが、ひとつのパークの中に、温浴施設があるというのは本当に珍しいですよね。
I部長:館内着の話の時にOさんが言ったように、最終的な目標は、館内着で園内を歩いてもらうこと。いわゆる温泉地で浴衣を着てお客さんが歩いているといった楽しみ方を、HANA・BIYORIの中でつくりたいねと。キーワードは「箱根に負けるな」。
I課長補佐:I部長がよく言っている、箱根まで行かなくても、よみうりランドで途中下車すれば、箱根にあるものは全部あるということですよね。自然もあるし、絶景のお風呂もある。銀座おのでら監修の極上の日本食もあると。箱根で味わいたいものはすべてここにあるということをつくっていこうとみんなで一丸になっています。
I部長:「泊まりのない日本旅館」をつくりたい。だから、園内で働く人、館内で働く人の接客研修もやりました。スーパー銭湯ではなく、「泊まりのない日本旅館」を創りあげていこうと。HANA・BIYORIが、日本旅館の庭園であっていい。
I課長補佐:よく、帰りのお客様をお見送りしているのですが、「小旅行に来たみたいだった」とか「本当に旅行だったね」と言われると、よかったなぁとしみじみ思います。
Oさん:「このまま泊まりたいね」っておっしゃるお客様もいますね。
I課長補佐:一方で、まだまだ、丘の湯のリニューアルと思われていらっしゃるお客様もいらっしゃるので、花景の湯の魅力を一から浸透させていきたいと個人的には思っています。
I部長:極上の癒やしを提供するというのがテーマ。それをイコール遊びと捉えて、できるだけ多くの癒やしの選択肢をお客さまに提供するために、新しいものはないかなと、みんなで考えて進化していきましょう。