株式会社よみうりランドが施設管理を担う読売ジャイアンツ球場。読売巨人軍と共催するイースタン・リーグ公式戦の他、独自のイベントやグッズなど「ジャイアンツ」×「遊び」の企画で、ジャイアンツファンはもちろん、地域の方々にも親しまれる球場として進化を続けている。その舞台裏には、よみうりランドの社員としてグラウンドの外で奮闘する一人の熱心なファンの姿があった。
ジャイアンツへの熱い想いに導かれ、ボールパーク事業部へ。
大学生の頃からのジャイアンツファン。推しの選手のグッズが出ればすべて買い集め、沖縄や宮崎で行われる春季キャンプにも足を運ぶほどだったIさん。就職活動でも、野球、とりわけジャイアンツに携わりたいと株式会社よみうりランドへの入社を決めた。「面接時からうるさいくらいに、ジャイアンツに携わりたいと伝えていました」と振り返るIさん。
その念願が叶い、現在はボールパーク事業部の運営課と法人営業推進課を兼務し、読売ジャイアンツ球場で行われる公式戦の運営業務をはじめ、イベントやグッズの企画、地域や企業の方々とジャイアンツ、よみうりランドのリレーションづくりといった多岐にわたる業務を担当している。仕事を進める上で大切にしていることを聞くと「お客様の生の声を大切にすること」と教えてくれた。「配属当初は、ジャイアンツファンとして、自分がこういうグッズが作りたいというものを企画していました。例えば、ジャイアンツのグッズって本当にオレンジや黒が多い。その中で、ピンクやパステルカラーなど一味違ったグッズも作りたいと、ずっと提案していました。」こうした、ジャイアンツファンとしてのリアルな感覚を活かした企画は、実際にグッズ化にもつながり、お客様にも喜ばれたそうだ。しかし、とある恒例イベントでの出来事で「それだけでは足りない」ということを痛感したとIさんは言う。「ドリンクに選手の写真を付けて販売するという前年の人気企画を踏襲した企画を実施したんです。前年にその企画が好評だったので、チームとしては、これなら毎年の定番イベントとしてやっていけそうだよねと考えていました。ただ、蓋を開けてみると、お客様から、毎年同じだと飽きてしまうといった声や、カードくらいのサイズが欲しいんだよね、といったご意見を頂きました」と当時を振り返るIさん。この経験から、お客様は常に上を求めているからこそ、しっかりリアルな声を聞かないと本当に欲しいものはわからないと考えるようになったと言う。
ファンの声を大切にした、「お客様の『欲しい』が詰まった球場」。
それ以来、公式戦の試合日などの機会を無駄にせず「こういうグッズ欲しいですか?」といった対話を重ねるなど、直接、お客様の声を聞くことを大事にするようになったそうだ。Iさんは「お客様のやりたいことや欲しいものが詰まった、お客様の意見でできている球場にしたいんです」と目指す球場の姿を語る。その言葉には、多くのファンの方に参加いただきながら、選手を身近に感じる楽しい時間や体験をつくっていきたいという意欲が滲んでいた。ジャイアンツファンとしての視点と、お客様の声を大切にするIさんだが、もう一つ大切にしていることがあるという。それは「ここにしかないものを作りたい」という想いだ。その想いが色濃く出たのが初めてメイン担当を任された「ジャビットデー」というイベントだった。「ジャビット、ラビット、今年うさぎ年だなくらいの連想だったのですが、選手にうさぎの絵を描き下ろしてもらって、それを缶バッジにしてスタンプラリーの景品にしました」とさらりと語るIさん。しかしさっぱりした口調とは裏腹に、その実現にはハードルもあったという。「選手が描き下ろしたイラストをグッズ化した前例がジャイアンツの1軍も含めてなく、さらに球団側からもうさぎの絵だけではなく、ジャイアンツらしさも出してほしいという意見を頂いたりもしました」。まさにジャイアンツ史上初めての取り組みだった。もちろん、ジャビットを描いてもらうという選択肢もあったそうだが、選手にかかる負担などを考え、うさぎにしたと振り返る。背景含め、根気よく説明した結果、球団側の了承も得られ、SNSを中心に大きな話題となった。中には、「1軍でもやって欲しい」という意見も出るほどの好評ぶりに大きな手ごたえを感じたと言う。当初はスタンプラリーの参加者先着150名限定の景品だったが、球団側との販売ライセンスの整理を行った後にグッズ化し、より多くのファンに「ジャイアンツ史上初の缶バッジ」が届けられるようになった。
よみうりランドだから切り拓ける、「野球×何か」の無限の可能性。
遊びのプロとしてジャイアンツの魅力を発信すること。そこには、どんな相乗効果が生まれるのか。Iさんは「ジャイアンツのファンに対しては、より深く球団や選手を知ってもらうチャレンジができること。そして、一般の方には読売ジャイアンツ球場を含めて新しく知ってもらうきっかけを作れること」だという。
よみうりランド遊園地内で行われる「ジャイアンツデー in よみうりランド」は、その2つの要素を盛り込んだイベントだそうだ。
「最近は、女性のジャイアンツファンもかなり増えているので、ファン向けのトークショーは『胸きゅん』をテーマにすることもある。とは言え初めて来た方でもどんな選手かわかるように野球の話を盛り込むなど、そのバランスに気を付けながら組み立てています」。ジャイアンツに精通した部署として、よみうりランド遊園地と球団の間に入り何が一番面白いかを考えたそうだ。トークショーのチケットは即完売。SNSでも話題となり、当たったなという手ごたえがありました」とIさんは頬を緩める。
「球団単体では、よみうりランドというコンテンツが使いきれない。選手をアトラクションに乗せたり、遊園地の施設を活用したり、エンタメ企業である私たちが入ることで『野球×何か』という可能性が無限に広がり、野球以外の目的で球場に来てくれる人を増やすことができることが、私たちが一緒に運営を担う意味です。」
ボールパ―ク構想を機に、 地域をジャイアンツのオレンジで染める。
よみうりランドは、読売新聞社・読売巨人軍と共に、 2025年3月にオープンするジャイアンツタウンスタジアムを核にしたスポーツとエンターテインメントが融合する「TOKYO GIANTS TOWN構想」を進めている。
Iさんはこのボールパークを起点に、自治体とも連携しながら地域にもっと多くのジャイアンツファンを生み出し「稲城市周辺を、ジャイアンツのオレンジに染めたい」と展望を語った。
「ボールパーク事業部は、ジャイアンツというコンテンツとよみうりランドという2つの強いコンテンツを活用できる非常に強い部署。よみうりランドの周辺地域の人たちに、もっとジャイアンツに親しみを持ってもらえるよう働きかけることが仕事」だと言う。野球を見る場所として設計されている現在の読売ジャイアンツ球場から、野球以外のことも包み込むボールパークになることで、地元の方の憩いの場になり、野球がない日でも来る目的がある場になることを目指したいとIさんは理想を語った。
「よみうりランドには、多彩な施設があり、これで完成でもおかしくない。それでも今なお、ボールパークを含めて、常に新しい挑戦をしているところが、まさに未完成。今後もこれでよみうりランドは完成ですっていうことはなく、進化し続けていくんだろうなと私は思っています」と最後にIさんは教えてくれた。
遊びのプロとして、そして1人のジャイアンツファンとして「お客様のやりたいことが詰まった球場づくり」というIさんの挑戦もまた、たくさんの新たなジャイアンツファンを生み出しながら続いていくことだろう。