これ以上ない環境を届け続ける。
名門コースを支える、妥協なき管理と遊びへのこだわり
東京よみうりカントリークラブは、1964年、ゴルフコース設計の名匠「井上誠一」によって生まれた会員制のゴルフ場だ。井上氏特有の戦略性の高いコースは、ゴルフの聖地とも呼ばれている。
「会員制のため誰でも入れるわけではないのですが、やはりあの井上誠一先生が設計したコースでプレーできるというのが、クラブメンバー(クラブ会員のこと)のみなさんの誇りと愛着になっていますね。近年も一部、ホールの改修があったのですが、井上先生の理念を壊さないように、というメンバーのみなさんからの熱い要望もあり、井上先生から直接薫陶を受けたお弟子さんに依頼しました」と語るのはマネージャーのAさん。
そんなAさんが、クラブメンバーのもう一つの誇りと語るのが、長年にわたって東京よみうりカントリークラブで開催されている国内男子ツアーの最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」。数々の名勝負の舞台となってきたコースで特に名高いのが、最終ホールとなる18番ショートホールだ。グリーンの傾斜が強く、「魔の18番」と言われる難関であり、プロですら翻弄されるこの名物ホールでは数多くのドラマが生まれてきた。プロが苦戦するほどの、「あの」環境でプレーできるという特別な体験。それは東京よみうりカントリークラブでしか味わえない醍醐味の一つであり、クラブメンバーにとっての喜びになっている。
取材が行われたのはちょうど、そのゴルフ日本シリーズJTカップの開催を一週間後に控えた日のことだった。大会に向けて着々と準備が進んでいく様子を眺めながら、開催のためにどんなことをしているかとAさんに尋ねると、返ってきたのは「コース管理でしょうかね。いつも通りの」と意外な回答。日本一を決める大会だというのに、いつも通りとはどういうことか。真意を聞いてみると、「もちろん0.1ミリの芝の差にこだわるし、冬場でもあの芝の緑を絶やさないように徹底管理しています」と自信をのぞかせたが、続けて「けれどJTカップだからやっているわけじゃなく、それが東京よみうりカントリークラブとしての基準なんです。だから、コース管理としては本当に『いつも通り』のことをやっています」と笑う。
Aさんいわく、「いつでもこの品質は絶対守る」という基準とプライドが、グリーンキーパーたちの中に脈々と受け継がれているのだという。「僕も彼らと話していると、もはやDNAに刻まれているのかな?(笑)と驚くぐらい、若い人たちにも浸透しているんですよね」とAさんは感心するように話す。JTカップが開催されているからこの品質が維持されているのではなく、常にこの品質を保てるからこそ、JTカップがこの地で開催されているということなのだろう。しかし、なぜ日本一のトーナメントを開催できるほどのクオリティを一年中保ち続けられるのか。
「それはもちろん、クラブメンバーのみなさんに、ゴルフという遊びを、一番いい状態で楽しんでもらうためです。最高の遊びをお届けしたいですからね」
名門コースを支える徹底した管理は、「遊び」にこだわる純粋な想いから生まれているのだ