従業員から学んだ、
よみうりランドの「比類なき」
ホスピタリティ。
読売新聞社で、40年近くキャリアを重ねてきた溝口社長にとって、よみうりランドに来てからの日々はカルチャーショックの連続だったという。読売新聞社時代、ヒリヒリするような競争の中で政治や経済の事件の真相を追いかけてきた溝口社長の目には、「遊園地」「ゴルフ」「公営競技」「健康関連」と社内の多岐にわたる事業部それぞれがまるで別会社のように映ったそうだ。
しかしある日、それぞれ提供するサービスは違っていても、どの事業を担う従業員も共通して高いホスピタリティを発揮していることに気付いたという。「事業ごとにお客様が求めるものも、来てくださる目的も違う。従業員は、それぞれのお客様が満足していただけるような仕事をしていた」。そこに通底することこそ、お客様一人ひとりに寄り添うホスピタリティに他ならないと語る。そして、特筆すべきはその突き詰め方だという。
「正直『ここまでやるのか』と、従業員に驚かされることも多い。『かわさき子供元気プロジェクト(※)』実施の際も、アイデアを出し合い工夫を凝らす従業員の姿に感動しました。それほど彼らは日々“どうしたらお客様に楽しんでいただけるか”を徹底的に考え実践しています。私はホスピタリティの真髄を従業員から学ばせてもらいました」と笑顔をこぼす。
それぞれの施設を訪れるお客様を、一人も取り残すことなく「来て良かった」「また来たい」と思ってもらえるようにと励む従業員のストイックな姿に、「この突出したホスピタリティは、よみうりランドの大きな財産だ」と感じた溝口社長。よみうりランドの中に根付いたこの文化にさらに磨きをかけ、他の追随を許さないほどの「比類なきホスピタリティ」を目指したいと語った。ただのホスピタリティではなく徹底的に突き詰める「比類のなさ」こそが、よみうりランドのオリジナリティになるのだと。
※2021年3月、コロナ禍で日光への修学旅行が中止になってしまった川崎市立小学校在学の全ての6年生を対象に遊園地を貸切営業したプロジェクト。このプロジェクトにまつわるストーリーはこちらから
「遊び」とは、平和の象徴。
遊びで人と社会を支える。
自然豊かな熊本・天草で育った溝口社長は、今も潮の匂いを感じると、釣りをしたり海に潜って巨大なマンタと遭遇したりといった子どもの頃の遊びの思い出が蘇るという。学校から帰るとランドセルを放り投げて、遊びに駆け出すほどだった子ども時代と対照的に「大人になってからは、遊びは悪いことだとさえ考えてしまっていた」と目を細める。ラグビー観戦や、子どもの頃からファンの読売巨人軍の試合観戦、将棋やゴルフと多彩な趣味を持っているが、新聞記者の仕事に情熱を傾けるほどに、遊ぶ時間はどこか後ろめたさを感じさせたそうだ。しかし、よみうりランドに着任したことをきっかけに、溝口社長自身の遊びに対する価値観も変わっていった。
「会社や学校に行って疲れ果てることは誰にでもあるし、努力が報われることもある。そんな時こそ、気分をリフレッシュしたり、よくやったと自分を褒めてあげたりしたくなります。そこで、遊びがもたらす非日常の体験が重要になる。つまり遊びは、社会生活を営む上で欠かせないものであり、そこで生まれる満足が、日常に戻った時の社会性や生産性を高めることに直結するんです」と、よみうりランドで日々遊びと向き合ううちに辿り着いた「遊びの捉え方」を語った。
さらに、昨今の国際情勢の中で、遊びが社会の中で欠かせない「平和の象徴」であることにも気づかされたという。そのきっかけとなったのは、戦禍の状況を伝える映像だ。アトラクションが破壊され、子どもたちの姿のない遊園地の惨状を目の当たりにした溝口社長は「こんなことがあるのか。遊園地のあるべき姿じゃない」と強い憤りを感じたという。「遊園地、そして遊びは平和でなくては存在しえない。平和の象徴である遊園地や遊びを我々の手で守っていくんだと決意を新たにした」と語る眼差しには、遊びや楽しさを担う並々ならぬ使命感が滲んでいた。いわゆるエンタメ企業は「楽しい」を考える中、よみうりランドは遊びの社会的位置づけまでも考えていく。読売新聞社は言論で国際平和を守る。よみうりランドは健全な遊びを提供し続けることで、平和の象徴であり続ける。と溝口社長は付け加えた。
時代を捉えた変化を続けながら、
変わらない価値は守り抜く。
溝口社長に、遊びを考えるベースを伺うと「比類なきホスピタリティ」と同じくらい大切なことがあると教えてくれた。それは、変わらない「安心・安全」への意識だ。「人の命に関わるからこそ、安心・安全は何よりも大切。ここがよみうりランドの生命線だと言っていいくらい高い意識で取り組んでいる」と強調した。従業員に向けても、まずは安心・安全があり、そのうえでよみうりランドらしい「比類なきホスピタリティ」を、お客様と接するスタッフはもちろん、点検整備、園内清掃まで含めたすべての従業員で発揮し、お客様に思いっきり楽しんでもらおうと伝えているそうだ。これが実現されて初めてすべてのお客様に「来てよかった」「また来たい」と思ってもらえる施設になれるのだという。
変化の激しい時代と言われて久しいが、変わらないこともまた重要だと溝口社長は語る。「アトラクションやイベントなど時代のニーズを捉えながら、よみうりランドは常に変化し続けてきた。ただ、小学校に入学する前の小さなお子様も楽しめるアトラクションも豊富なことは、よみうりランドの特長であり、ここは変わらない価値として大事にし続けたい」。創業時から受け継がれてきた「すべての人に遊びを届ける」という熱い思いは、今もなおよみうりランドの中に脈々と受け継がれているのだという。
大切にしていく価値として変えないことと、時代やお客様のニーズが変わる中で、柔軟に変えていくこと。世代を問わず、あらゆるお客様をおもてなしし、遊びを届けるよみうりランドには、そのいずれの視点も欠かせないようだ。
思い出づくりに貢献する、
非日常的なリアルの感動をこの先も。
よみうりランドのすべての施設での体験に共通するものを、溝口社長は「非日常のリアルな感動」と表現する。「デジタル化が進んでいるが、非日常のリアルな感動を肌で楽しんでもらえるのがよみうりランドであり、お客様は、リアルを求めてよみうりランドが手掛ける各施設に足を運んでくださる。だからこそこの先も、遊びを提供するプロとして、いつだって非日常のリアルな体験を届けていきたい」と意欲をにじませた。そしてそれは、様々な思いを胸にしたお客様の「思い出作り」に関わる大切な仕事だと溝口社長。「振り返ると小さな頃遊園地で遊んだ記憶は、鮮明に記憶に残っているし、例えば観覧車にも様々な思い出のドラマがあると思う。そんな大事な人生の思い出になる場所を、私たちは提供している」と嬉しそうに語った。
2024年、遊園地「よみうりランド」は開園60周年の節目を迎え、秋には観覧車も新設する。今後は、「TOKYO GIANTS TOWN」や、「ポケパーク カント―」など続々と新たなプロジェクトがオープンに向けて進んでいく。特に「ポケパーク カントー」は、アニメともゲームとも違うリアルなポケモンの世界を楽しめる、まさに「非日常的なリアルな感動」を生み出す施設になるという。
「ポケモンがすごいのは、文化や言語の壁をあっという間に超えること。これを機によみうりランドとしても、インバウンドの取り込みを強化したい」と溝口社長は展望を語った。
変えないことを守りながら、それでも積極的な変化を主導する中で「まさに盆と正月とクリスマスが一緒に来たような忙しさです」と笑う溝口社長。その表情はあまりにも晴れやかで、よみうりランドの先頭に立って誰よりも「遊び」を楽しんでいるように見えた。