スポーツ×エンタメで従来のビジネスの枠を超え、
絶えず遊びの領域を広げていくよみうりランドの挑戦。

May 30, 2025

2025年3月、読売新聞東京本社、読売巨人軍、よみうりランド三社の共同事業として東京・多摩丘陵の一角に、スポーツとエンタメが融合した新たなまち、TOKYO GIANTS TOWNが誕生した。その中核を担うのは、かつてファンと読売ジャイアンツの選手の気軽な交流の場だった多摩川グラウンドの系譜を引いた「ファンと選手の距離が近い」球場、ジャイアンツタウンスタジアム(以下、Gタウン)。読売ジャイアンツのファーム球場でありながら、いつでも誰でも立ち寄れる「開かれた球場」であり、野球だけではない様々なエンタメを楽しめるマルチスタジアムである。 今回は、Gタウンの運営を担い、現在その進化の真っただ中にいるボールパーク事業部の3人が、新規ビジネスへの挑戦という視点から今日までの奮闘と展望を語った。

担当者紹介

左から:
Oさん/よみうりランド ボールパーク事業部 運営課 課長補佐
よみうりランドで主にイベント宣伝・広報等を担当したのち、読売新聞東京本社に出向し、巨人戦興行などを担当。2023年より現職。経営企画にも携わる。

Uさん/よみうりランド ボールパーク事業部長
読売新聞社で18シーズンにわたって巨人戦の興行に携わり、読売巨人軍にも出向。2023年からよみうりランドに出向し、現職。

Sさん/よみうりランド ボールパーク事業部 運営課
読売巨人軍で主にファンクラブの運営を担う。読売新聞東京本社では巨人戦興行も担当。2024年からよみうりランドに出向し、現職。

読売グループにおけるかつてない挑戦が始まった。 新たなスポーツ×エンタメビジネスにおいて、よみうりランドに託された使命とは。

Uさん:TOKYO GIANTS TOWN構想が、読売新聞社東京本社、読売巨人軍、よみうりランドの三社事業として進む中、大きく分けるとハード面は読売新聞と巨人軍で、ソフト面はよみうりランドで…という役割分担になったわけだけど、最初にこの話を聞いた時、どう思った?

Oさん:ここによみうりランドが入った意義を考えましたね。一つは、よみうりランドが読売グループのエンタメ領域の中核を担うことを期待されているからかなと。よみうりランドの強みはお客様サービスとエンタメ領域における幅広いビジネスの経験値です。だからそこを発揮してGタウンのエンタメを拡充することが求められていると。これは計画を進める中で何度も自問自答していたことでもありました。よみうりランドだからこそできることは何なのかと。

Sさん:確かに。あとTOKYO GIANTS TOWNは「スポーツとエンタメの融合」、Gタウンは「野球だけじゃない多目的スタジアム」という特殊なコンセプトを掲げていたことも理由の一つな気がしますね。自分は巨人軍の出身だし、野球の興行にもずっと携わってきましたけど、Gタウンはやっぱりこれまでの球場運営と同じやり方だと成立しない。今まで巨人軍で培ってきたスポーツビジネスの領域を超えた、まったく新しい挑戦だから。

Uさん:そうだね。だからこそよみうりランドの「遊びの開発力」みたいなところが期待されているのではと自分も考えていた。当社は70年を超える歴史の中で、ゴルフ場、競馬場、読売ジャイアンツ球場…というスポーツビジネスから、遊園地、水族館、ボウリング場、植物園、ホテル、温泉施設まで挙げだしたらキリがないけど(笑)、幅広いジャンルのエンタメビジネスに挑戦してきたじゃない。そうやって新規分野にも大胆に取り組んでいく姿勢と、そこで生まれた経験値や知見の積み重ねから、また新しい遊びを生み出していく力が評価されていたのかなと。

Oさん:そういうことだと思います。だから僕らの使命は、この場所の今までにない活用方法を編み出すこと。そして読売ジャイアンツはもちろん、球場のポテンシャルを活かした幅広いスポーツやエンタメ、それらがジャンルを超えて融合することで生まれる「新しいビジネス」を成立させていくことなんだと思っています。

Sさん:例えばですけど、観戦の楽しみを増やすのはもちろん、試合がない日にも公園みたいに使ってもらえるようにと、お客さんがいなくても通年営業することにした「G×DOMDOM」はその象徴の一つですよね。ランニングフェスティバル、リアル脱出ゲーム、コスプレが楽しめるGタウンコスなどのイベントもまさしく、よみうりランドだからこそできる球場らしからぬ活用の例かなと。

Oさん:結構いろいろなジャンルに取り組めているなという手ごたえはあります。けどまだここからですよ。音楽や野球以外のスポーツなど、さらに活用の幅を広げて、Gタウンが持つ可能性をどんどん拡張していきたいですね。

この地に新たなにぎわいを生み出し、地域の人々と経済に活力を。

Sさん:Gタウンでは「開かれた球場」を大切にしているじゃないですか。これも特徴的かつ重要なコンセプトだと思いますけど、お二人はどう捉えていますか。

Oさん:まず「開かれた球場」のゆえんは、壁がないことですよね。さらに年間を通じてコンコース開放日を設けるなど誰もが入れるという物理的な環境もあると思います。けどそこには「野球ファンだけじゃない多様な人が、思い思いの目的でいつでも気軽に訪れられる球場」という心理的な側面も含んでいると考えています。そしてその「野球ファンだけじゃない」の第一歩が、地域の方々を巻き込んでいくことかなと。まずは身近な人に親しみを持っていただけないと、閉じたままになってしまいますから。

Uさん:そうだよね。稲城市とは包括連携協定を締結し、実際に日々やりとりをするようになった。他の多摩エリアの自治体とも顔の見える近さでの取り組みが増えているけど、この場所には「地域の活性化」という社会的な使命があるよね。

Sさん:地域の活性化は、いろいろな企画を立てる上で指針の一つにもなっているポイントですよね。スタジアムの話をする中で、よく「にぎわいを生む」という表現が出てきますが、Oさんの言う通り、にぎわいを生むには内側の自分たちが頑張るだけでは無理ですからね。地域の方々にファンになっていただいて、一緒に盛り上げていく。そうやって実現していくことだと思っています。

Oさん:球場をあらゆるジャンルの作品の発表の場にする「Gタウンキャンバス」はまさしくそんな思いから生まれました。今は第1弾として南山小学校の6年生の児童の作品を飾っていますけど、絵を描いた子どもたちもこの場所に愛着がわくし、その親御さんや友達、もしかしたら親戚だって来てくれるかもしれない。そうやって地域の方々との関係を構築しながら、ともにGタウンを作り上げていきたいです。

Uさん:展示品の前で自分の作品をうれしそうに指さしている子どもを見て、こういうのが必要なんだなって感じた。別の視点でいうと、このスタジアムには150社を超える企業にお力添えいただいているけど、その中には地元企業も多いじゃない。それだけ地域の方々に期待されているってことだから、その期待には全力で応えていきたいよね。それに私たちがGタウンを通じて地域を盛り立てていくことで、経済面においても誘客面においても、地元の企業にその勢いが波及していくことがきっとあるはずだから。

Sさん:確かに。僕らにはその責務がありますよね。

Oさん:さらに「よみうりランド」という企業の視点から見ても、「地域のにぎわいづくり」は昔からずっと取り組んできたことでもあります。よみうりランドのビジネスは、わかりやすい例でいえば遊園地ですけど、基本的に地に根付いたビジネスじゃないですか。やっぱり近隣地域の方々が一番身近なお客様ですし、中で働く人々もこの地に愛着を持っているのを肌で感じます。
長年この地で事業を行ってきたからには、エンタメビジネスでこの地を盛り上げていく責任があるし、逆にまちに活気がなければ、ビジネスも成立しないんです。だからこそ、「読売ジャイアンツ」という強力なコンテンツを持つGタウンがこの地に誕生したのは、よみうりランドとしても良いことだったと思います。
そういう意味ではGタウンの運営を単体で考えるんじゃなくて、そこから遊園地、植物園、温泉と周辺施設への回遊を促してGタウンおよび会社のマネタイズをはかっていくことが大切ですし、この地に根付く企業として、エンタメによる地域活性化を今まで以上に加速させていかねばと考えています。

Uさん:つまりGタウンという場所は、地域の人々に活気をもたらすという社会的意義と同時に、地域経済の最大化という使命も持っているわけだ。そのうえで当然、施設の経営としても成立させていく必要もある。地域における社会的役割とビジネスとしての施設運営の両立は、私たちが長期にわたって取り組み続けていくテーマの一つといえるね。

0から挑戦し、自ら手掛ける。 そして新たな遊びの可能性の種をまいていく。

Oさん:僕らには読売ジャイアンツ球場の運営経験があるとはいえ、今回はまったくビジネスモデルが違いました。持っている経験を活かしつつも、完全に新たな領域へ挑戦していく必要があるという。初めて続きでいろいろ手探りではありましたが、中でも何が印象的でした?

Uさん:個人的には、直営売店かな。G×DOMDOMの設立にあたっては、ランド社内からの紹介はあったもののゼロからドムドムバーガーさんにお願いして実現に結び付いたものだったから。今ではそれをフードサービス部がしっかりと形にしてくれていて、大変ありがたい。

Sさん:隣でUさんとOさんが大量の業務を精力的にこなしている姿を見ながら、相当に力の入った企画なのを感じていました。二軍の球場で、飲食店舗やグッズショップを直営しているというのはかなり特殊ですよね。

Uさん:飲食店やショップの運営はテナントに委託するのが球場では普通だよね。そこを今回、共同事業としてよみうりランドの直営という手法にしたのには理由があって、一つはマネタイズの側面から考えて、それが適切だったから。計算してみると、この規模の球場運営にはやっぱりかなりのコストがかかるから、たとえ手間がかかったとしても自分たちで経営してマネタイズしていく方がいいと。それに「お客様がいない日にもオープンする」と決めちゃったので、テナントだと受けてくれるところがなかったし(笑)

Oさん:理由はもう一つあって、「ビジネスノウハウの蓄積」ですよね。実際社内からも「自分たちでやって会社の血肉にしろ」と何度も言われてきました。そもそもよみうりランドの人たちには、なんでも「極力自分たちでやる」というDNAが流れていて、みんな自然とその手段を選んでいるんですけど。振り返ってみるとこれは、会社にとってもかなり意義のあることですよね。外に任せず自分たちで手掛けることで経験値が溜まっていって、それがあるからまた新たなビジネスに挑戦できる。その連続で遊びの領域を広げてきた会社ともいえます。

Sさん:確かに、Gタウンでやっていることもまさにそうですね。よみうりランドで培ってきたエンタメビジネスのノウハウがあったからこそ、リアル脱出ゲームやGタウンコスなど、今までの球場になかった新しい遊びを生み出せましたから。

Uさん:単に新たな遊びを作るという意味でもそうだし、既存の遊びに対しても、そうやって少しずつ新たなチャレンジや工夫をしてやり方の幅を広げてきたからこそ、「遊びビジネス」として成立・継続できているという側面もあるのかもしれないね。
二軍戦一つとっても、G×DOMDOMやオリジナルのグッズショップを入れることで観戦体験を膨らませているし、Gタウン特有の「選手とファンの距離が近い」という観戦環境も、他の球場では味わえない喜びを提供できている。実際、読売ジャイアンツ球場の頃よりもぐっと観客数が増えたのは、そういう挑戦の結果が出始めているといえそう。

Sさん:「選手とファンの距離が近い」というからには、さらにそれを実感できる企画も立てたいですよね。まだ計画途中ではありますけど、選手との触れ合いがあればもっと観戦の楽しみが広がるのでは?という構想もあります。

Oさん:様々な体験の幅を広げてきた僕らとしては、アイデア次第で会場が持つポテンシャルはもっと引き出していけると考えています。個人的には、よみうりランドが得意とするエンタメと「読売ジャイアンツ」を掛け合わせた企画をもっといろいろとできたらいいなと、いま企画や構想を温めてます。そうやって、従来の球場の在り方を超えた遊びにどんどん取り組んでいくことで、Gタウンが持つ遊びの価値をさらに大きくしていけると思っています。

Uさん:よみうりランドが挑戦しているのは、ただの運営というよりは「スポーツビジネスの枠を拡大して利益の最大化を図ること」であり、「遊びの領域を広げる」ことなんだろうね。それがまた、今は想像もできない新たな遊びに繋がっていく。このサイクルを回し続けていきたいね。

Gタウンをキャンバスに、豊かな人生に欠かせない 「想像のちょっと先をいく遊び」を描き続ける。

Oさん:今後の展望を聞いてもいいですか?

Uさん:Gタウンという建物自体は、素晴らしいものができたじゃない。けどここから、この施設にどれだけ命を吹き込めるか、どれだけ活用方法を広げていけるかは、私たちよみうりランドにかかっていると思っています。だからまずはこの一年が勝負かなと。今年どれだけ多様なチャレンジができるかが、来年以降のGタウンの在り方を左右するぐらいに考えている。Gタウンにかける思いをこの一年で体現していかないと。今年やったことが、今後の運営の基盤にもなっていくからね。
従来の「スポーツビジネス」の枠にとらわれない大胆なチャレンジをして、来年以降に「ここまでやれるんだ」という流れを作っていくのがいまの私たちの役割です。マネタイズという面から考えても、どんどん新たなビジネスを生んで運営を維持し続けなければならないし。Sさんはどうですか?

Sさん:すでにいい意味で「球場らしくない」遊びを作ってきているのを自負していますけど、まだまだ足りない。もっともっとできると思うんです。だから果敢に挑戦していきたいですね。

Oさん:もっともっと!というのは本当によみうりランドらしいですね(笑)。よみうりランドは「遊びを、まん中に。」をスローガンに掲げていますけどそれは、遊びを衣・食・住と同じぐらい豊かな人生に欠かせないものだと考えているから。それだけ遊びにまじめだし、枠にとらわれない遊びを追い求めています。そしてGタウンはまさしく、その「遊び」を思う存分発揮できるキャンバスなんですよね。スポーツも、エンタメも、日常も、人生も、すべてを充実させられる可能性を持っているし、人の成長や人生を変えるシーンがここにはいっぱいあると僕は信じています。
だからこそ、「スポーツ」「エンタメ」という枠を超えた新しい遊びをビジネスとして成立させつつ、ここにしかない、想像のちょっと先をいく遊びをみんなに届け続けていきたいですね。

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